この街まちの どこかに今いまも あの日ひの夢ゆめが眠ねむらせてある
暗闇くらやみの向むこう側がわから 少年しょうねんの瞳めが 僕ぼくを見みつめている

もう10年以上前じゅうねんいじょうまえの汗あせが 染しみ込こんだ古ふるいグローブの
中なかで汗あせをかいた手てのひらが 何なにかつかもうとしているんだ

市営しえいグラウンドの駐車場ちゅうしゃじょうの 壁かべに思おもい切きり投なげつけた
ボールはまるで行いき場所ばしょの無ない 情熱じょうねつの塊かたまりのように
跳はね返かえり 跳はね返かえり 跳はね返かえり
転ころがって 転ころがって 転ころがって また戻もどって来くる

あの寝転ねころがった草くさの匂におい あの滑すべり込こんだ土つちの匂におい
息いきを呑のみ込こんだ 一瞬いっしゅんの静寂せいじゃく 見上みあげた空そらの色いろ
あの青春せいしゅんの輝かがやきが この頃ころは憎にくたらしかった
信しんじることから だから逃にげながら

夕暮ゆうぐれ時どきと日曜日にちようびは ボールの音おとが響ひびき渡わたる
汚よごれた壁かべはいくつもの 破やぶれた夢ゆめと哀かなしみの跡あと
ひたすら壁かべにぶつけては ひたすらそれを受うけ止とめる
ああ もう一度いちど もう一度いちど 夢ゆめが欲ほしい

終電車しゅうでんしゃの窓まどに映うつる 自分じぶんの顔かおを眺ながめてた
坂道さかみちの途中とちゅうで立たち止どまり 君きみが待まつ部屋へやの明あかり見みつめた

ゲームセットのその前まえに スリーアウトのその前まえに
もう一度いちど 確たしかめてみたい もう一度いちど あの壁かべに向むき合あって
抱だきしめて 抱だきしめて 抱だきしめて
受うけ止とめて 受うけ止とめて 受うけ止とめて 取とり戻もどしてみたい

あの土砂降どしゃぶりの雨あめの匂におい 君きみを抱だきしめた髪かみの匂におい
息いきを止とめて 全身ぜんしんで感かんじた 飛とび出だしそうな鼓動こどう
あの青春せいしゅんの輝かがやきに 追おいつけなくて苦くるしかった
見みつめることから だから逃にげながら

ずっとずっとずっと前まえに 忘わすれかけていたスピードで
鼓動こどうがリズムを刻きざみ出だす まだやれる 間まに合あうかも知しれない
まだ 間まに合あうかも知しれない まだ 間まに合あうかも知しれない
グローブの中なかで汗あせばんだ手てが 今いま 何なにかつかもうとしている
ああ もう一度いちど もう一度いちど 夢ゆめが欲ほしい

この街まちの どこかに今いまも あの日ひの夢ゆめが眠ねむらせてある
暗闇くらやみの向むこう側がわから 少年しょうねんの瞳ひとみが 僕ぼくを見みつめている