ゆうべ突然懐とつぜんなつかしい気持きもちになって
小学校しょうがっこうの校庭こうていに忍しのび込こんだ
あの頃ころあんなに大おおきく見みえてた鉄棒てつぼうが
今見いまみてもやっぱり大おおきかった

今いまの子こってみんな発育はついくがいいのか?
それとも自分じぶんが伸のびてないのか?
もちろん両方りょうほうだ わかってるんだぜ
夜空よぞらを見上みあげて 少すこし笑わらった

校庭こうていの隅すみに金網かなあみの檻おりを発見はっけん
そうそう昔むかしはウサギを飼かってたな
覗のぞいてみるとウサギは一匹いっぴきもいない
にわとりが一羽硬いちわかたくなってた

錆さびついたベンチ 捨すてられた運動靴うんどうぐつ
砂すなの匂においとすり減へったホームベース
ぼんやりと見みてたら後うしろに人ひとの気配けはい
少年しょうねんが一人立ひとりたっていた

「おい、おっさん。そこで一体何いったいなにやってるんだい?」
「うん、ちょっと懐なつかしくなっちゃってね。ところで君きみは一体誰いったいだれだい?」
「僕ぼく? 僕ぼくは君きみだよ。30年前さんじゅうねんまえの。」
「おいおい、大人おとなをからかうもんじゃないだろ?」
「まぁ、信しんじる信しんじないは君きみの勝手かってなんだけどさ。年としとると素直すなおじゃなくなるね。大人おとなって楽たのしいかい?」
「うん、まぁ、昔むかしと変かわらないよ。ただ昔むかしと違ちがうのは、昔むかしはうれしい時ときに涙なみだなんか流ながれなかったかもなあ。」
「僕ぼくの夢ゆめはかなえられてる?」
「コメディアンになりたいって夢ゆめだっけ? まぁ、似にたような事ことしてるよ。」
「そっか。じゃ、幸しあわせなんだね。」
「どうだろ?幸しあわせなのかな?そもそも幸しあわせって一体何いったいなんだろうねぇ?」
「夢中むちゅうになれるもの持もってるって事ことだろ? そんな事こともわからなくなっちゃったの?」
「そっかぁ、じゃあ僕ぼくは幸しあわせだ。」
「しっかりしてくれよ いい年としこいて。今年ことしで39さんじゅうくだろ?背中曲せなかまがってるぜ、おっさん! さあ、そろそろ僕ぼくは行いかなくちゃ。」
「もう行いくのかい?また会あえるかな?」
「君きみが会あいたいって思おもえばいつだって会あえるさ。僕ぼくは君きみの心こころの中なかに住すんでるんだから。」

少年しょうねんの姿すがたはいつの間まにやら消きえて
辺あたりに真暗まっくらな闇やみだけ残のこった

思おもい出ではいつも この胸むねの中なかだけ
帰かえるのはいつも この胸むねの中なかだけ

思おもい出ではいつも この胸むねの中なかだけ
帰かえるのはいつも この胸むねの中なかだけ

故郷ふるさとはいつも この胸むねの中なかだけ
情熱じょうねつはいつも この胸むねの中なかだけ

友達ともだちはいつも この胸むねの中なかだけ
涙なみだはいつも この胸むねの中なかだけ

喜よろこびはいつも この胸むねの中なかだけ
寂さびしさはいつも この胸むねの中なかだけ

世界せかいはいつも この胸むねの中なかだけ
争あらそいはいつも この胸むねの中なかだけ

夢ゆめはいつも この胸むねの中なかだけ
愛あいはいつも この胸むねの中なかだけ

歌うたはいつも この胸むねの中なかだけ
歌うたうのはいつも この胸むねの中なかだけ
歌うたうのはいつも この胸むねの中なかだけ
歌うたうのはいつも この胸むねの中なかだけ