坂さかの下したの 安やすアパートが僕ぼくの家いえ
隣となりのビルのせいで 日ひが当あたらない
宝物たからものの電気でんきスタンド・筆ふで・机つくえ
空腹くうふくも忘わすれて ひたすら絵えを描かく

こんな家いえに住すみ こんな暮くらしがしたい
なんて事ことを キャンバスに塗ぬりたくる
流ながす涙なみだも タメイキすらも

「ねぇ 僕ぼくここで生いきてるよ まだ絵えを描かいてるよ
ねぇ そこからは僕ぼくが見みえるの? 僕ぼくを認みとめてくれるの?」

坂さかの上うえの お城しろみたいな僕ぼくの家いえ
雲くもの上うえのような 日ひの当あたり具合ぐあい
宝物たからものの 地位ちいと名誉めいよと満足感まんぞくかん
失なくす事こと 恐おそれて ひたすら絵えを描かく

「こんな風ふうにしろ」と 筆ふでも心こころも 何なにかに縛しばられたまま
キャンバスを塗ぬりつぶす
流ながす泪なみだや タメイキの色いろで

「ねぇ 僕ぼくどこで生いきてるの? なんで絵えを描かくの?
ねぇ あなたには僕ぼくが見みえるの? 僕ぼくを笑わらってくれるの?」

宝物たからものは何なんだっけ?
思おもい出だせず苛いらついて 折おろうとした筆ふでが こう言いった気きがした
「ずっと見みてたよ 絵えが好すきなんだろう?」

「ねぇ 僕ぼくここで生いきてるよ まだ絵えを描かいてるよ
ここからは何なにが見みえるの? 僕ぼくが描かかずにいられない景色けしき!」
「ねぇ ほら 見みてくれよ! 生いきてるんだよ?
だって 絵えを描かいてるんだぜ!? あなたにも見みえるでしょう?」

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