- 文字サイズ
- よみがな
限きれない 闇やみを 擦なすりて 仄白ほのじろい 雨あめが降ふる
濡そぼつる 螟蛾めいがの 翅はねを 穏おだやかに もぎ落おとす
もう 何なにも 視みえぬ 瘧わらわやみの中なか 深ふかく 深ふかく 沈しずみたい
止やまない 雨あめを 集あつめて 仄暗ほのぐらい 闇やみが眩くる
時雨しぐれれることも 忘わすれた 眼鞘まなざやを 閉とざす為ため
もう 誰だれも 知しらぬ 黄泉國よもつくにの底そこ
ずっと ずっと 焼やかれたい
嗚呼ああ 恋こいの歌うたを 嗚呼ああ 彼かれに伝つたえて
嗚呼ああ 遠とおき風かぜに 愛いとおしき 声こえを聴きく
旅たびの 縁よすがに 戯ざれて 誑たらした 女おみな
見目麗みめうるわしく 艶事欠つやごとかかぬ 色女いろめ
何時いつか 番つがうと 容易たやすく 包くるめ 枕まいて
畢おわるや否いなや 穴けつを捲まくりて 帰路きろへ
何処いずこへ 失うせた 愛いとしき 男おのこ
失うしなわれたのは 花はな
決けっして 違たがわぬ 貴方あなたの 匂におい
詐いつわりの 業ごうに 泣ないて
此この儘まま 往いかないで 彼あの日ひが 堕おちてゆく
頑かたくなに迫せまる 蛇心じゃしんの嬌笑きょうしょう 抗あらがい 鰾膠にべも無なく
戯言けごんの契ちぎりを 片腹痛かたはらいたしと 足蹴あしげにすれども 無駄むだ
嗚呼ああ せめて 只ただ 一言ひとこと「其方恋そなたこいし」と 聞きかせて
嘘うそでも 偽いつわりでも どうか 其その傍そばに 居いさせて
噫ああ 逢瀬おうせ 重かさね重がさね 恋こうる心こころ 更さらに 燃もえ上あがる
噫ああ 逢瀬おうせ 重かさね重がさね 凍こおる心こころ 新さらに 冷さめてゆく
立たち籠こめる 夏霞なつがすみ 憧あこがれは 泡あわと消きゆる
止とめどなく 流ながれ 落おつるは 悔くいの泪なみだ 貴方あなたを信しんじて
野辺のべに 咲さく 花はなにさえ 憐あわれびを 向むけように
人ひとでなく 畜生ちくしょうの 道みちを 只ただ 這はいずれば
「恋こいもせぬわ」 と
余あまりと言いえば 余あまりな言いい種ぐさ
臠にくが爛ただれる 残酷ざんこくの雨あめ 蛇くちなわの獄ごくの中なか
生いきて帰かえさぬ 骨ほねも残のこさぬ 其その罪つみを 悔くいて死しね
今更いまさら 呼よばないで もう直じき 楽らくになる
愛いとしい 人ひとを 殺あやめた 贖あがないいの 雨あめが降ふる
止やまない雨あめを 集あつめた 滾たぎつ瀬せに 身みを委まかす
濡そぼつる 螟蛾めいがの 翅はねを 穏おだやかに もぎ落おとす
もう 何なにも 視みえぬ 瘧わらわやみの中なか 深ふかく 深ふかく 沈しずみたい
止やまない 雨あめを 集あつめて 仄暗ほのぐらい 闇やみが眩くる
時雨しぐれれることも 忘わすれた 眼鞘まなざやを 閉とざす為ため
もう 誰だれも 知しらぬ 黄泉國よもつくにの底そこ
ずっと ずっと 焼やかれたい
嗚呼ああ 恋こいの歌うたを 嗚呼ああ 彼かれに伝つたえて
嗚呼ああ 遠とおき風かぜに 愛いとおしき 声こえを聴きく
旅たびの 縁よすがに 戯ざれて 誑たらした 女おみな
見目麗みめうるわしく 艶事欠つやごとかかぬ 色女いろめ
何時いつか 番つがうと 容易たやすく 包くるめ 枕まいて
畢おわるや否いなや 穴けつを捲まくりて 帰路きろへ
何処いずこへ 失うせた 愛いとしき 男おのこ
失うしなわれたのは 花はな
決けっして 違たがわぬ 貴方あなたの 匂におい
詐いつわりの 業ごうに 泣ないて
此この儘まま 往いかないで 彼あの日ひが 堕おちてゆく
頑かたくなに迫せまる 蛇心じゃしんの嬌笑きょうしょう 抗あらがい 鰾膠にべも無なく
戯言けごんの契ちぎりを 片腹痛かたはらいたしと 足蹴あしげにすれども 無駄むだ
嗚呼ああ せめて 只ただ 一言ひとこと「其方恋そなたこいし」と 聞きかせて
嘘うそでも 偽いつわりでも どうか 其その傍そばに 居いさせて
噫ああ 逢瀬おうせ 重かさね重がさね 恋こうる心こころ 更さらに 燃もえ上あがる
噫ああ 逢瀬おうせ 重かさね重がさね 凍こおる心こころ 新さらに 冷さめてゆく
立たち籠こめる 夏霞なつがすみ 憧あこがれは 泡あわと消きゆる
止とめどなく 流ながれ 落おつるは 悔くいの泪なみだ 貴方あなたを信しんじて
野辺のべに 咲さく 花はなにさえ 憐あわれびを 向むけように
人ひとでなく 畜生ちくしょうの 道みちを 只ただ 這はいずれば
「恋こいもせぬわ」 と
余あまりと言いえば 余あまりな言いい種ぐさ
臠にくが爛ただれる 残酷ざんこくの雨あめ 蛇くちなわの獄ごくの中なか
生いきて帰かえさぬ 骨ほねも残のこさぬ 其その罪つみを 悔くいて死しね
今更いまさら 呼よばないで もう直じき 楽らくになる
愛いとしい 人ひとを 殺あやめた 贖あがないいの 雨あめが降ふる
止やまない雨あめを 集あつめた 滾たぎつ瀬せに 身みを委まかす