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昔々むかしむかし さかえしくに
王子おうじがひとりりへと
禁忌きんきもりはい
がけあしられて
けばつきちぬよる

そのとき眩暈めまいのなか ちかづくのは金色こんじき姿すがた
気高けだかそびえたつの 一頭いっとう神々こうごうしい牡鹿おじか
不思議ふしぎひかり若者わかものわれくしたように
ゆみかまえて ねらいをさだめて
たわげんはがね

いのちなどしまぬと
鹿しかぎんいろのこえ
だがこの森守もりまもるわたしが
ねばすべてはいばらとなり
おまえのみやこほろびるだろう

心臓しんぞう
きんくびいだかわ
いさんでしろはこばれる

とせ王子おうじおう
戦破いくさやぶくにおとろ
茨伝いばらつた城壁じょうへき
なげわす人々ひとびと
あいさち遠去とおざかりゆく

やがてはうものまで そこえとかわきのなか
もりへとおとなえどもちた木々きぎ のひとつもなく
いずみけものかげさえなくただかぜとお
つかくずれ ふとげれば
黄金おうごんおさな牡鹿おしが

あなたはちちかたき
いつかとおなこえひび
でもしかばねしたくに
ふたたよみがえらせるのは
あなたをおいてはだれもいない

永遠えいえんの わたしのこの血肉ちにく
国人くにびとすくえるだろう

いのちささげましょう
鹿しかぎんいろのこえ
おうなみだをこぼしながら
やわらかなむねへと
あのあやまちをこころから懺悔ざんげして
あらためたおう禁色きんじきひかりきる

ぬまで二頭にとうのアラかわ
まといつづけながら