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よみがな
衣替ころもがえにははやすぎた学生服がくせいふく自転車じてんしゃかごれた
別子べっしやまから見下みおろした燧灘ひうちなだおだやかだった おだやかだったよ
いまふっとおもした
あのころこのなかには
なんにもかった
なんにもかった
うしなうものはなんにもかった
あったのは期待きたい不安ふあんだけ

昼下ひるさがりの陽炎かげろうには金木犀きんもくせいれていた
ぼくにはすべてがつかめるようなつもりでいた
まもるものは
なんにもかった
なんにもかった
うしなうものはなんにもかった
うみこうにいしげてはとお世界せかい夢見ゆめみていたな
みしめていたつちことなどにもしなかった
あったのは期待きたい不安ふあんだけ