古ふるいタイプライターの音おとが響ひびいた。
雑ざつに脱ぬいだカーディガンに染しみ付つく煙草たばこの
ニコチンも銘柄めいがらも分わからないふりをして。
寒さむくなる部屋へやの中なか、ラジオの音おと。

知しらない、知しらないの。

彼女かのじょの方法論ほうほうろんを聴きいた。
「後悔こうかいなんて意味いみのないことで、単細胞たんさいぼうが生いき残のこっていく、
そんなもんさ」と笑わらっていたんだ。

黒くろいサイドワインダーの模型もけいを手てにして
血ちみたいなワインを飲のみ続つづけている。
「くだらない」つぶやいて、同おなじことを繰くり返かえす。
朝あさも無ない、昼ひるも無ない、夜よるも無ないし、いらないの。

彼女かのじょの人生観じんせいかんを聴きいた。
「懺悔ざんげなんて意味いみのないことって何万回なんまんかいと偉人達いじんたちが言いってた、
そんなもんさ」と笑わらっていたんだ。
言いっていたんだ…。