夜よるの壁かべは越こえられない 越こえられない 越こえられない
この闇やみを抜ぬけ出だすことは難むずかしい 難むずかしい
でも眠ねむりにつくことは決けっして難むずかしいことじゃない
だからみんなそうする そうしているんだろう

でもぼくは眠ねむらない 眠ねむらない 眠ねむらない
この闇やみを切きり裂さくことは難むずかしい 難むずかしい
でも歌うたうことは少すこしも難むずかしいことじゃない
だからぼくはそうする まだ見みぬ朝あさに 君きみに
遠とおい遠とおい君きみの町まちまで 届とどくものは果はたしてあるか
渡わたり鳥どりたちは羽はねを休やすめ 町まちは深ふかい眠ねむりの中なか
人々ひとびとは思おもい思おもいの夢ゆめを空そらに浮うかべてる
ぼくのか細ぼそい声こえは 歌うたは 君きみの窓辺まどべの花はなの雫しずくに
君きみの朝あさの夢ゆめの一瞬いっしゅんに 君きみの朝食ちょうしょくのパンのかけらになれるだろうか
今いま 夜よるを越こえて 夜よるを越こえて

夜よるの壁かべは越こえられない 夜よるの闇やみは抜ぬけ出だせない
悲かなしみは闇やみに埋うもれない さみしさは闇やみでごまかせない
眠ねむることは難むずかしくない 逃にげ出だすことは恥はずかしくない
まぶたを閉とじれば夜よるはいない だからみんなそうする
でもぼくは眠ねむらない 闇やみにも孤独こどくにも屈くっしない
ごまかせるほどに強つよくはない 逃にげ出だすこともままならない
決けっして君きみには届とどかない 誰だれもそんなことは言いい切きれない
歌うたわなければおさまらない だからぼくはそうする
遠とおい遠とおい君きみの町まちまで 届とどく歌うたは果はたしてあるか
少年しょうねんのバイクの騒音そうおんと 恋人こいびとたちの愛あいの言葉ことばと
朝あさを待まつ労働者ろうどうしゃたちの叫さけびを越こえて
ぼくのか細ぼそい声こえは 歌うたは 君きみのまぶたに注そそぐ光ひかりに
君きみの指先ゆびさきが触ふれる朝あさに 君きみの庭にわの鳥とりの囀さえずりになれるだろうか
今いま 夜よるを越こえて 夜よるを越こえて