ふと見上みあげればそこには
円まるく浮うかぶ春月しゅんげつ
ああ。
あなたも見みてよと願ねがう

甍いらかを照てらす月映つきばえに
萌出もえでる春香はるかおり
ああ。
あなたに届とどけと願ねがう。

ミモザは風かぜに揺ゆれて
あなたを招まねく

あたしはここにいるわ あなた
迷まよわないで。ここにいるわ、あなた
あたしはここにいる、ここに。

山桜やまざくらにこでまりに
輝かがやき放はなつ春宵しゅんしょう
ああ。
あなたも居いればと願ねがう

然しかりとてここは地上ちじょうゆえ
あなたまでは果はてなく
ああ。
飛とんで行いきたいと乞こうの

沈丁花じんちょうげは薫かおり立たち
あなたを呼よぶ

ぶらんこに腰こしかけて
高たかく、高たかく舞まえと漕こぐの
想おもいはあなたにあるのに
あたしは飛とべない

あたしはここにいるわ あなた
迷まよわないで。ここにいるわ、あなた

あたしはここにいるわ あなた
迷まよわないで。ここにいるわ、あなた

あたしはここにいる。
ここに。