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よみがな
貴婦人きふじんあま香水こうすい
透明とうめいちょうはねのように
おうぎかげささやきが
楽士がくしらの前奏ぜんそうけて…

フロアへとすべわたし爪先つまさき
裳裾すそきずる衣擦きぬずれと
かさなりった沓音くつおと
まり見上みあげれば
あおをした そのひと

言葉ことばのない 眼差まなざしの会話かいわ
つつまれる
薄絹うすぎぬ手套越てぶくろごしに
つめたいゆび つたわれども
不安ふあん欠片かけらひとつなく
少女しょうじょあこがれのゆめ
いまこの瞬間ときへとむすばれる

ワルツはほしまたた
おののきにうつくしい
おもうのはらぬひと
みずうみいろの かのひとみ

白亜館はくあかん門扉もんぴそと
ふかもり一人迷ひとりまよ
やがてつき光墜ひかりおちて
よこたわる翡翠ひすい水面みなも
そしてほとりたたずむあなた

言葉ことばもなくされるうで
きしめられ
眩暈めまいおどっている
きんうろこ まとさかな
ぎんこえさえずとり
みだれておぼれるはな
ここはどこで
あなたはだれ?

また今宵こよい彷徨さまよんでは
いばらとげ おそれもせずおくおく
言葉ことばもなく べるうで
からめとられ
やみかいおどっている
これがゆめであるのならば
どうかけしてめないよう
二度にどはなれられないように
わたし心臓しんぞうめて

薔薇ばら
そのでもぎとるように