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あめったら、コーヒーをもう、
仄青ほのあお鼻先はなさきらして。
かぜいたら、こんがりしてて、
網戸越あみどごしのパンながめる。

しかし、まいっちゃったな、
さっきからなにかがへんで。
こんなにおだやかなあさなのに。

でもなみだがこぼれたその瞬間しゅんかん
やっぱりむねくるしくなって、
さびしさだけがぼくえてゆく。
本当ほんとう全部ぜんぶわかっているくせに、
つめたらえなくなっちゃうから、
ぼく元気げんきなんです、
あなたはもういないけれど。

つめあったら、ぽっかりしたへ、
もぐってける、窒息ちっそくするくらい。
だからまえいてあるこう、
バターのようなうそってでも。

しかしね、毎日まいにち太陽たいようのように無邪気むじゃきで、
づいたら、
すっかりかされてたりしてね。

そしてなみだがこぼれたその瞬間しゅんかん
やっぱりむねするどくなって、
やぶってゆくよ、かくしたものを全部ぜんぶ
でもなみだがこぼれたそのあとには、
やっぱりむね元気げんきになって、
いろんな物事ものごとあたらしくなってく。
だから余計よけいかなしくなるんです、
このなみだかかえたいとしさも、
あなたの感触かんしょくや、空気感くうきかんも、
きっといつかはうすれてしまうのでしょう?
こんなくるしいのに。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。

わすれたくないから、
まだつめたくない。
おいしいパンべたい、
まえもどりたい。