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幽かすかな記憶きおくの 糸いとを手繰たぐるように
仄暗ほのぐらい森もりへ 足あしを踏ふみ入いれた
幼おさない記憶きおくの 途みちを辿たどるように
入いり組くんだ森もりの 奥おくへと進すすんだ
物心ものごころついた時ときには、既すでに父ちちの消息しょうそくは不明ふめいで、
私わたしと母ははは何時いつも二人ふたり、とても貧まずしい暮くらしだった。
井戸いどに毒どくを入いれた等などと、謂いわれなき罪つみで虐しいたげられる事ことも多おおく、
私わたしにとって友達ともだちと言いえるのは、森もりの動物達どうぶつたちだけだった……。
それでも 嗚呼ああ ねぇ 母さんムッティ 私わたしは幸しあわせだったよ
その理由りゆうを ねぇ 知しってた? 貴女あなたが一緒いっしょだったから
それなのに 何故なぜ 母ははは 私わたしを捨すてたのか?
どうしても それが 知しりたくて……
小ちいさな私わたしを拾ひろってくれたのは 大おおきな街まちにある修道院しゅうどういんだった
けれど 激はげしく吹ふき荒あれた改革かいかくの嵐あらしと
新教徒達しんきょうとたちの手てによって 嗚呼ああ 無惨むざんにも破壊はかいされた
人生じんせいは数奇すうきなもの 運命うんめいは判わからないから
ひとつの終おわりは 新あたらしい始はじまりと信しんじて 勇気ゆうきを持もって
積年せきねんの疑問ぎもんを 解とく為ために 故郷こきょうを探さがす 旅たびを始はじめた
私わたしの来訪らいほうを待まっていたのは、石いしのように年としを取とった老婆ろうばで、
まるで見知みしらぬその女性じょせいが、母ははであるとは俄にわかには信しんじ難がたく、
娘わたしであると気付きづく事こともなく、唯ただ、食料しょくりょうを貪むさぼる母ははの瞳めは、
既すでに正気しょうきを失うしなっているように思おもえた。
そして……。
改宗かいしゅうしたけれど時ときは既すでに遅おそく、
一人ひとりの食くい扶持ぶちさえもう侭ままならなかった。
懺悔ざんげを嗤わらう逆十字ぎゃくじゅうじ。
祈いのりは届とどかない。
赦ゆるしも得えられぬまま、罪つみだけが増ふえてゆく……。
森もりに置おき去ざりにされた 可哀想かわいそうな兄妹こどもたち
捨すてられた子この 悲かなしい気持きもちは 痛いたいほど解わかるわ
鳥達とりたちを操あやつり パン屑くずの道標みちしるべを消けし
真雪まゆきのように 真まっ白しろな鳥とりに 歌うたわせて誘さそった
見みて、【Hansel】お兄にいちゃん。ほら、あそこに家いえがあるわ!
でも、【Gretel】それは、怖こわい魔女まじょの家いえかも知しれない……けど
けど?
腹はらぺこで……死しぬよりましさ! 死しぬよりましね!
屋根やねは焼き菓子レープクーヘン。窓まどは白砂糖しろざとう
お菓子かしの美味おいしい家いえを、拵こさえてあげようかねぇ!
嗚呼ああ 遠慮えんりょは要いらないよ
子供こどもに腹一杯食はらいっぱいたべさせるのが 私わたしのささやかな夢ゆめだった
嗚呼ああ 金貸かねかしだった夫おっとは 生いきては帰かえらなかったけど
幾許いくばくかの遺産いさんを託ことづけてくれていた……
老婆ろうばの好意こういに 無償むしょうの行為こういに 甘あまえた兄妹ふたりは 食たべ続つづけた
少女しょうじょはある日ひ 丸々太まるまるふとった 少年しょうねんを見みて 怖こわくなった
「嗚呼ああ、老婆ろうばは魔女まじょで、二人ふたりを食たべちゃう心算つもりなんだわ!」
殺やられる前まえに 殺やらなきゃ ヤ・バ・イ!
背中せなかを ドン! と 蹴飛けとばせ!
仄暗ほのぐらい森もりへ 足あしを踏ふみ入いれた
幼おさない記憶きおくの 途みちを辿たどるように
入いり組くんだ森もりの 奥おくへと進すすんだ
物心ものごころついた時ときには、既すでに父ちちの消息しょうそくは不明ふめいで、
私わたしと母ははは何時いつも二人ふたり、とても貧まずしい暮くらしだった。
井戸いどに毒どくを入いれた等などと、謂いわれなき罪つみで虐しいたげられる事ことも多おおく、
私わたしにとって友達ともだちと言いえるのは、森もりの動物達どうぶつたちだけだった……。
それでも 嗚呼ああ ねぇ 母さんムッティ 私わたしは幸しあわせだったよ
その理由りゆうを ねぇ 知しってた? 貴女あなたが一緒いっしょだったから
それなのに 何故なぜ 母ははは 私わたしを捨すてたのか?
どうしても それが 知しりたくて……
小ちいさな私わたしを拾ひろってくれたのは 大おおきな街まちにある修道院しゅうどういんだった
けれど 激はげしく吹ふき荒あれた改革かいかくの嵐あらしと
新教徒達しんきょうとたちの手てによって 嗚呼ああ 無惨むざんにも破壊はかいされた
人生じんせいは数奇すうきなもの 運命うんめいは判わからないから
ひとつの終おわりは 新あたらしい始はじまりと信しんじて 勇気ゆうきを持もって
積年せきねんの疑問ぎもんを 解とく為ために 故郷こきょうを探さがす 旅たびを始はじめた
私わたしの来訪らいほうを待まっていたのは、石いしのように年としを取とった老婆ろうばで、
まるで見知みしらぬその女性じょせいが、母ははであるとは俄にわかには信しんじ難がたく、
娘わたしであると気付きづく事こともなく、唯ただ、食料しょくりょうを貪むさぼる母ははの瞳めは、
既すでに正気しょうきを失うしなっているように思おもえた。
そして……。
改宗かいしゅうしたけれど時ときは既すでに遅おそく、
一人ひとりの食くい扶持ぶちさえもう侭ままならなかった。
懺悔ざんげを嗤わらう逆十字ぎゃくじゅうじ。
祈いのりは届とどかない。
赦ゆるしも得えられぬまま、罪つみだけが増ふえてゆく……。
森もりに置おき去ざりにされた 可哀想かわいそうな兄妹こどもたち
捨すてられた子この 悲かなしい気持きもちは 痛いたいほど解わかるわ
鳥達とりたちを操あやつり パン屑くずの道標みちしるべを消けし
真雪まゆきのように 真まっ白しろな鳥とりに 歌うたわせて誘さそった
見みて、【Hansel】お兄にいちゃん。ほら、あそこに家いえがあるわ!
でも、【Gretel】それは、怖こわい魔女まじょの家いえかも知しれない……けど
けど?
腹はらぺこで……死しぬよりましさ! 死しぬよりましね!
屋根やねは焼き菓子レープクーヘン。窓まどは白砂糖しろざとう
お菓子かしの美味おいしい家いえを、拵こさえてあげようかねぇ!
嗚呼ああ 遠慮えんりょは要いらないよ
子供こどもに腹一杯食はらいっぱいたべさせるのが 私わたしのささやかな夢ゆめだった
嗚呼ああ 金貸かねかしだった夫おっとは 生いきては帰かえらなかったけど
幾許いくばくかの遺産いさんを託ことづけてくれていた……
老婆ろうばの好意こういに 無償むしょうの行為こういに 甘あまえた兄妹ふたりは 食たべ続つづけた
少女しょうじょはある日ひ 丸々太まるまるふとった 少年しょうねんを見みて 怖こわくなった
「嗚呼ああ、老婆ろうばは魔女まじょで、二人ふたりを食たべちゃう心算つもりなんだわ!」
殺やられる前まえに 殺やらなきゃ ヤ・バ・イ!
背中せなかを ドン! と 蹴飛けとばせ!