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時計塔とけいとう歯車はぐるまおと
それは彼女かのじょきているあかし
この秒針びょうしんまらぬように
見守みまもるのが「ぼく」の役目やくめ

かつての主人しゅじん 物欲ぶつよく化身けしん
みずからのつみは いつの
おのれ自身じしんほろぼすのだと
どうしてはや気付きづけなかったか

彼女かのじょ半身はんしんいまのこみにく火傷やけどあと
あの二人ふたりおもきざんでる

今日きょうもまた まよんだ
なにらぬあわれな訪問者ほうもんしゃ
かれらもすぐ「墓場はかばあるじ」の
胃袋いぶくろおさまることだろう

主役気取しゅやくきどりの あの「おんな
いつもどおりのわがまま三昧ざんまい
片割かたわれ」をうしなったさみしさ
すこかお宿やどしながら

孤独こどくおとこがその間際まぎわつくげた
もりおくちいさな映画館えいがかん
わすられたそのときはじめた
ぜんまい仕掛じかけの子守唄こもりうた

血染ちぞめのはさみ」「紫色ししょくかたな
いまだ目覚めざめぬかれらを日々ひび
すべてのうたかたられたときに
理想郷ユートピア完成かんせいするらしい

時計とけいはりまることは
彼女自身かのじょじしんわりを意味いみする
さびついてけた歯車達はぐるまたち
のこされた時間じかんながくない

孤独こどくおとこがその間際まぎわつくげた
もりおくちいさな映画館えいがかん
館長かんちょうつとめるのはかれもっとあいした
「ぜんまい仕掛じかけの人形にんぎょう

覚悟かくごめた
ぼくみずからの左胸ひだりむね
そっとふかしこんだ…

ぼくのぜんまいは時計塔とけいとう歯車はぐるま
ひびって そしてあらたにはじまる物語ものがたり
時計とけいはりまらぬように
まわつづけるのがぼく役目やくめ