半なかば陽ひも落おちた頃ころ 喧騒けんそうはかすか赤あからんで
古ふるい歌うたと煤すすけた匂においが切せつなくなって
イヤホン外はずしてすぐ 定刻ていこくにバスが停とまって
いつも通どおり一番後いちばんうしろの座席ざせきに腰下こしおろす

目めを奪うばった町並まちなみが僕ぼくのものだったら
焼やけるような夕暮ゆうぐれなんかにしないだろう
命いのちの果はてを知しった鮮あざやかさなんて
すぐ、怖こわい闇夜やみよに盗ぬすまれる

ねぇサンセットバスは何処どこへ向むかって
何処どこで終おわのだろうって
まだ薄うすいライトが道みちを照てらすけど
帰かえれなくてもいいかなって。
サンセットバスは坂さかを上のぼってお別わかれだね
「世界せかいが終おわるみたいだよ」って
子供こどもが云ゆう

幾度いくども乗のせては降おろす それぞれに生活せいかつがあって
飾かざり気けのない心こころを委ゆだねる 帰かえるべき場所ばしょがある

まだ仄ほのか誰だれかの体温たいおんがシートに残のこされ
きっとこの夕陽ゆうひを眺ながめてたんでしょう
僕ぼくだけのものになるはずないって
わかってるけど、なぜ溜息ためいきは膝ひざに落おちてゆく?

サンセットバスは僕ぼくを攫さらって
何処どこへ連つれてくのって
“とまりますボタン”のプラネタリイムが
帰路きろに舞まう夜光虫やこうちゅうみたいで
サンセットバスはひとりきりでお別わかれだね
みんな帰かえって寂さみしくないの?

食卓しょくたくかこむ幸福こうふくと 窓まどから漏もれる灯ひと
深ふかい色いろのカーテンが夜よるを告つげる
そんな当あたり前まえを壊こわしてほしい
次つぎの幸しあわせ ありつく僕ぼくは
なんて我儘わがままだ

サンセットバスは何処どこへ向むかって
何処どこで終おわるだろうって
陰かげるアスファルトから伸のびる街灯がいとうが
染そめる道みちを帰かえろうか
サンセットバスは今夜こんやも眠ねむって
夢ゆめを見みるの
終おわる、またとない今日きょうのこと
明日あしたのこと