ああ、今夜こんやも雨あめが降ふる
冷つめたい雨あめが降ふる
近ちかづいては行ゆき過すぎる
靴音くつおとに耳みみを澄すます

ああ、すっかりびしょ濡ぬれになって
あなたは帰かえってきた
くたびれた顔かおでほほえむ
疲つかれたでしょう、おかえりなさい

あなたの目めを見みていった
大事だいじな話はなしがあるの
自分じぶんに嘘うそをつくのは
もうそろそろおやめなさい

あなたの帰かえる場所ばしょは
あの人ひとのいるところ
どんなに隠かくしてみても
私わたしにはわかってしまう

あなたと暮くらすことが
私わたしのしあわせだった
でももう終おわりにしましょう
元もとの場所ばしょにおかえりなさい

明日あしたの朝あさが来くれば
何なにもかも消きえてしまう
だから最後さいごに今夜こんやだけ
私わたしを抱だいてちょうだい

あなたの黒くろい瞳ひとみも
あなたの優やさしい声こえも
あなたの暖あたたかな手ても
今夜限こんやかぎりは私わたしのもの

ああ、私わたしの優やさしい人ひとよ
今夜こんやでさようなら
私わたしが初はじめて愛あいした人ひと
最後さいごに愛あいした人ひと

ああ、今夜こんやも雨あめが降ふる
冷つめたい雨あめが降ふる
あなたが風邪かぜをひかぬように
私わたしが暖あたためてあげる