「最后のダンスステップ (昭和柔侠伝の唄)」の歌詞 あがた森魚

私わたしの名なは朝子あさこです。
齢としは十八じゅうはち、身長しんちょうは百六十三ひゃくろくじゅうさんセンチです。
自分じぶんでは綺麗きれいな方ほうだと想おもっています。
髪かみの毛けは、今短いまみじかいですが、ぢき長ながくなると想おもいます。
お酒さけはまだあまりのめませんが、
ブルースとタンゴくらいは踊おどれます。

今宵限こよいかぎりのダンスホール
あなたのリードでステップ踏ふめば
お別わかれするのに夜会服やかいふくが
何なんとか明日あしたもくうるくると

おいらめとろのつむぢ旋風かぜ
ソフトハットをなびかせて
シベリア・ケーキにお茶ちゃでも飲のんで
ギンザのキネマに行いきたいナァ

踊おどろうか 踊おどりましょう
せめて 今宵こよいかぎりでも

あなたなんだかおセンチね
もうすぐ外地がいちへお出征でましね
あたしも最後さいごのパアマネント
この髪乱かみみだして踊おどりたい

踊おどろうか 踊おどりましょう
せめて 今宵こよいかぎりでも

今宵こよいかぎりのダンスホール
扉閉とびらとざせば あすしれぬ
今風立いまかぜたちぬ いざ征ゆかん
あすは 異邦いほうのつむぢ旋風かぜ

踊おどろうか 踊おどりましょう
どうせ 今宵こよいかぎりぢゃない