「生と死を別つ境界の古井戸」の歌詞 Sound Horizon

陽ひが昇のぼり 嗚呼ああ 汗塗あせまみれ 炊事洗濯全すいじせんたくすべて 私わたしの仕事しごと
嗚呼ああ 意地悪いじわるな 寡婦ははの口癖くちぐせ

追おい出だされたいのかい? この愚図ぐずっ!

なんて言ゆうけれど－－

私わたしは今日きょうも お父さんファーティ 頑張がんばっているよ!

陽ひが落おちて 嗚呼ああ 塵塗ごみまみれ 炊事洗濯全すいじせんたくすべて 押おし付つけた
嗚呼ああ 性悪しょうわるな 義妹いもうとの口癖くちぐせ

言いい付つけられたいのかい? この愚図ぐずっ!

なんて言ゆうけれど－－

私わたしは明日あすも お父さんファーティ 頑張がんばってみるよ!

父ちちは舟乗ふなのりだったのに、何故なぜか井戸いどに落おちて死しんだらしい。
だから私わたしは、あまり井戸いどが好すきではない。
それでも継母ははは、容赦ようしゃなどしないのだ……。

井戸いどの傍そばで、糸いとを紡つむぐ、指先ゆびさきはもう……
嗚呼ああ、擦切すりきれて緋あかい血ちを出だして、
紅あかく糸巻いとまきを染そめ上あげたから

洗あらい流ながそうと井戸いどを覗のぞき込こんだら、
水みずに焦こがれる魚うおのように手てから飛とび出だして、
その糸巻いとまきは、井戸いどの底そこに沈しずんだ。
悲恋ひれんに嘆なげく乙女ローレライ、正まさにそんな勢いきおいで－－

泣なきながら帰かえった私わたしに容赦ようしゃなく、継母ははは言いい放はなった－－
「この愚図ぐずっ! 潜もぐってでも取とってきなっ! じゃなきゃ晩飯ばんめしは抜ぬきさっ!」
「この愚図ぐずっ!」 「取とってきなっ!」 「晩飯ばんめしは～抜ぬきさっ!」

道急みちいそぐ背中せなかに、宵闇よいやみが迫せまっていた……

目覚めざめれば綺麗きれいな草原そうげん。
幾千いくせんの花はなが咲さき誇ほこる。

異土いどへ至いたる井戸いどの中なかで、衝動いどを抱だいた男いどに遇あって、彼かれの指揮しきで憾うらみ唄うたった。私わたしは－－
死しんじゃったの? 天国てんごくなの? 気きの【ceui】なの? 分わからないわ。
大丈夫だいじょうぶ! でも私わたしは頑張がんばるよ! お父さんファーティ、何時いつだって!

こまっちゃった。あたしをひっぱりだしてぇ。ひっぱりだしてぇ。
もう、とっくのむかしにやけてるんだよぅ

マジで!

こまっちゃった。ぼくを、ゆすぶってぇ。ゆすぶってぇ。
もう、みんなじゅくしきってるんだよぅ

わぉ!

喋しゃべるパンの願ねがいを聞きいて
シャベルで全部ぜんぶ 掻かき出だしてあげたわ

そして－－
ひとつ残のこらず 実みが落おちるまで 林檎りんごの木きを揺ゆらし

その後ご－－
散ちらばる林檎りんごを 積つみ上あげるだけの 簡単かんたんなお仕事しごと

キャー!!

形かたちあるモノは、いつか必かならず崩くずれ、
命いのちあるモノは、いずれ死しを迎むかえるのさ

これまで、よく頑張がんばったね。お前まえは強つよい娘こだね。
でもこれからは、私わたしのもとで働はたらくなら、きっと幸しあわせになれるわ!

うんっ、私頑張わたしがんばるっ!

嗚呼ああ 綺麗きれいに舞まい散ちる羽毛はねぶとん 振ふるのが新あらたな私わたしの仕事しごと
嗚呼ああ 地上ちじょうに舞まい落おちる雪ゆきの花はな 降ふるのは灼あらたかな私わたしの仕業しわざ

「キミが、もし冬ふゆに逢あいたくなったら、私わたしに言いってねぇん」

あいたっ!

大おおきな門もんが開ひらくと 黄金きんの雨あめが降ふってきて
あっという間まに 全身ぜんしん 覆おおった……

キッケリキー! うちの、黄金きんのお嬢様じょうさまのお帰かえりだよぅ

日ひが替かわり 嗚呼ああ 黄金塗きんまみれ 炊事洗濯全すいじせんたくすべて やらなくて良いい!
嗚呼ああ 低能ていのうな 継母ははの入いれ知恵ぢえ

貴女あなたも貰もらっておいで<<可愛い実子ちび>>ちゃん!

なんて言ゆうけれど－－

やれるものなら どうぞ 頑張がんばっておいで!

キッケリキー! うちの、バッチぃお嬢様じょうさまのお帰かえりだよぅ

日ひが過すぎて 嗚呼ああ 瀝青塗ちゃんまみれ
ほら 怠惰たいだな態度たいどが 貴女あなたの罪つみよ 自業自得じごうじとくだわ ねぇ－－

これからは貴女あなたも 必死ひっしに頑張がんばってみなよ!