「親切」の歌詞 吉田拓郎

いつの間まにかの事ことだけど
君きみは僕ぼくと親したしそうに口くちをきく
僕ぼくの何なにが欲ほしいのかは知しらないが
君きみは僕ぼくの友達ともだちになってくれたんだね

そんなに時間じかんはいらなかったよ
君きみが僕ぼくの家うちへ来くるようになるまでに
何処どこの誰だれカサンから聞きいたのかは知しらないが
心こころの中なかにまで土足どそくで ハイ失礼しつれいってね

僕ぼくはまだまだ時間じかんがいるんだよ
君きみの事知ことしってるなんて言いうのもつらい
信しんじてますなんてとても言いえないよ
言いえなくなったのは、いつからかまでも忘わすれちまった

やさしそうな顔かおをして近ちかづいて来きて
手てでも握にぎって僕ぼくらは仲良なかよしさ
やるせない位くらいの勇気ゆうきを出だして
今度こんどはどこで逢あおうよなどと言いったりしてる

それ程気ほどきにしないでもいいんだよね
僕ぼくは迷惑めいわくだなんて言いわないし
君きみは気持きもちのいい人ひとなんだから
そうだ、そこまで考かんがえる必要ひつようもないよね

外そとは毎日砂嵐まいにちすなあらしで歩あるきにくい
口くちの中なかがザラザラで、のどもカラカラ
そんな時ときでも君きみは逢あいに来きてくれる
僕ぼくはカッコつけてピエロになってやるさ

面倒臭めんどうくさがり屋やの僕ぼくなのに
どうしてなんだろう、やりきれないな
君きみは僕ぼくの事こと とても詳くわしく知しってるんだね
あゝ今日きょうもまたボブ・ディランの話はなしかい、やだね

思おもいがけないめぐりあわせでもないし
ただ、僕ぼくに逢あいに来きた時ときの君きみは
変へんに親切しんせつで面白おもしろい男おとこだなと思おもったし
それが今日きょうまで友達同志ともだちどうしとはお笑わらいだ

僕ぼくはその日ひが来くるような気きがする
もうゴメンだ、もうとてもじゃない
これで終おりにしようとどちらが言いい出だすか
そう、僕ぼくは君きみに言いってもらえると気きが楽らくだね

今日きょうから僕ぼくは家うちにいる事ことにしよう
タバコの煙けむりでもながめていよう
街まちは相変あいからずの祭まつりばやし
サヨナラ、君きみはもう背中せなかを向むけなさい

あゝ頭あたまの中なかに何なんていっぱいのドラマが
皆みんなが皆みんな、主人公しゅじんこうにおさまっててね
もうそれも今日きょうかぎりにしよう
サヨナラ、君きみの親切しんせつが今消いまきえた